馬場良馬・遊佐航らが客演、笠原浩夫・松本慎也ら劇団員と熱演!スタジオライフ『ヴェニスに死す』が上演中!公演オフィシャルレポート&ゲネプロ画像をUP
昨年、35周年を迎えた演劇劇団スタジオライフの最新公演『ヴェニスに死す』が、9月1日より東京・新宿のシアターサンモールにて上演開始。開幕直前に行われたゲネプロのオフィシャルレポートと公演画像が到着しました。
今作は、1912年に発表されたトーマス・マンの小説「ヴェニスに死す」の舞台化。
スタジオライフでは、青山円形劇場での初演(1997年)以来24年ぶりに、2021年版『ヴェニスに死す』として再構成しての上演となります。
主人公・アッシェンバッハ役の笠原浩夫さんをはじめ、松本慎也さん、山本芳樹さん、曽世海司さん、関戸博一さん(9/4 マチネまで)、伊藤清之さん、船戸慎士さん、大村浩司さん、藤原啓児さんといった劇団員が登場し、馬場良馬さん、遊佐航さん、ミヤタユーヤさん(9/5 ソワレより)が客演として出演します。
■ゲネプロオフィシャルレポート
人の心はいつも天秤が揺れている。片方の秤には規律と道徳。もう片方の秤には欲望と背徳。どちらの秤が重いかは、人それぞれ。そして、何かの拍子で秤の重さが逆転することもある。
スタジオライフがコロナ禍の 2021 年に上演を試みた『ヴェニスに死す』は、感染症対策によって接触の禁じられた現代を反射するような、愛と恍惚の物語だった。
スタジオライフでは、青山円形劇場での初演(1997年)以来24年ぶりに、2021年版『ヴェニスに死す』として再構成しての上演となります。
主人公・アッシェンバッハ役の笠原浩夫さんをはじめ、松本慎也さん、山本芳樹さん、曽世海司さん、関戸博一さん(9/4 マチネまで)、伊藤清之さん、船戸慎士さん、大村浩司さん、藤原啓児さんといった劇団員が登場し、馬場良馬さん、遊佐航さん、ミヤタユーヤさん(9/5 ソワレより)が客演として出演します。
■ゲネプロオフィシャルレポート
人の心はいつも天秤が揺れている。片方の秤には規律と道徳。もう片方の秤には欲望と背徳。どちらの秤が重いかは、人それぞれ。そして、何かの拍子で秤の重さが逆転することもある。
スタジオライフがコロナ禍の 2021 年に上演を試みた『ヴェニスに死す』は、感染症対策によって接触の禁じられた現代を反射するような、愛と恍惚の物語だった。
笠原浩夫さん
消毒液の臭いが充満する街で、男は規律を捨て、欲望に生きた
おそらく文学にそれほど馴染みがない人でも、タイトルは聞いたことがあるであろうト
マス・マンの名作小説『ヴェニスに死す』。それは、ドイツを代表する国民的作家、グスタフ・フォン・アッシェンバッハが執筆業で疲弊した心を休めるために訪れたヴェニス(ヴェネツィア)で、ポーランド人の美しき少年・タッジオに恋をする物語だ。
トーマス・マンがこの作品を発表したのは1912年のこと。つまり実に100年の時を超え、『ヴェニスに死す』は世界中で読み継がれていることとなる。中でも、マーラーの『交響曲第5番の第4楽章(アダージェット)』が心に残るルキノ・ヴィスコンティ監督による映画が最も有名だろうか。タッジオを演じたビョルン・アンドレセンの美しさは、当時の観客を大いに魅了した。
そんな世界的傑作に、スタジオライフが挑む。同劇団での上演は 1997年の初演以来、24年ぶりとなる。その背景にコロナ禍があることは間違いないだろう。なぜなら、アッシェンバッハが訪れたヴェニスではコレラが流行していた。疫病の蔓延するその街を、本来ならばアッシェンバッハは一刻も早く立ち去らなければいけなかった。だが、一度は街を出ることを決めながら、あるアクシデントを口実に再び舞い戻る。彼はヴェニスから離れたくなかったのだ。そこには、恋しきタッジオがいるから――。
『ヴェニスに死す』が100年もの間、愛され続けているのは、アッシェンバッハの命を懸
けた最後の恋にどうしようもなく共鳴してしまうからだろう。齢は50をこえ、貴族に列せられるまでになった大作家が、恋をしたことで我を失う。それまで模範的に生きてきたはずが、放埓の波に身を委ねる。その姿が、愚かで、だけど人間らしくて、いとおしい。観客それぞれの心の中にある道徳と背徳の天秤をしきりに揺さぶるから、つい吸い寄せられてしまう。
おそらく文学にそれほど馴染みがない人でも、タイトルは聞いたことがあるであろうト
マス・マンの名作小説『ヴェニスに死す』。それは、ドイツを代表する国民的作家、グスタフ・フォン・アッシェンバッハが執筆業で疲弊した心を休めるために訪れたヴェニス(ヴェネツィア)で、ポーランド人の美しき少年・タッジオに恋をする物語だ。
トーマス・マンがこの作品を発表したのは1912年のこと。つまり実に100年の時を超え、『ヴェニスに死す』は世界中で読み継がれていることとなる。中でも、マーラーの『交響曲第5番の第4楽章(アダージェット)』が心に残るルキノ・ヴィスコンティ監督による映画が最も有名だろうか。タッジオを演じたビョルン・アンドレセンの美しさは、当時の観客を大いに魅了した。
そんな世界的傑作に、スタジオライフが挑む。同劇団での上演は 1997年の初演以来、24年ぶりとなる。その背景にコロナ禍があることは間違いないだろう。なぜなら、アッシェンバッハが訪れたヴェニスではコレラが流行していた。疫病の蔓延するその街を、本来ならばアッシェンバッハは一刻も早く立ち去らなければいけなかった。だが、一度は街を出ることを決めながら、あるアクシデントを口実に再び舞い戻る。彼はヴェニスから離れたくなかったのだ。そこには、恋しきタッジオがいるから――。
『ヴェニスに死す』が100年もの間、愛され続けているのは、アッシェンバッハの命を懸
けた最後の恋にどうしようもなく共鳴してしまうからだろう。齢は50をこえ、貴族に列せられるまでになった大作家が、恋をしたことで我を失う。それまで模範的に生きてきたはずが、放埓の波に身を委ねる。その姿が、愚かで、だけど人間らしくて、いとおしい。観客それぞれの心の中にある道徳と背徳の天秤をしきりに揺さぶるから、つい吸い寄せられてしまう。
馬場良馬さん
(左)松本慎也さん
ヤシューの若さと眩しさが、中年の恋を無残に引き裂く
今回、アッシェンバッハに扮したのは、劇団員の笠原浩夫。タッジオを客演の馬場良馬が演じた。比較的しっかりした体格の笠原がアッシェンバッハを演じることで、地位と名声を得た大作家が制御できない恋心に翻弄されながらも威厳を保とうとする、その理性と本能の格闘が色濃くにじみ出る。ミュンヘンでは黒ずくめの服だったアッシェンバッハは、旅立ちと共に白のスーツに着替える。もう黒く塗り固めた世界には、戻れない。もう彼はタッジオに出会ってしまったのだから。
強く心をとらえられたのは、アッシェンバッハが化粧を施される場面だ。大の男の頬に塗られたピンク色のチークは見る人によっては笑い種かもしれない。けれど、きっと多くの観客にはそうは見えないはずだ。紅をさした瞬間のアッシェンバッハの高揚が、舞台上から観客の胸めがけて飛び込んでくる。規範意識という名の足枷から解放された喜びに、じんわりと体が熱くなる。タッジオをつけまわすアッシェンバッハは不気味かもしれない。でもその狂気より、初恋のような懊悩にシンパシーが湧いてくる。そんな人物造形だったと思う。
本作は、決して会話で心象風景が描写される作品ではない。舞台という表現方法の限られた場でアッシェンバッハの葛藤を伝えるために、演出の倉田淳がとった方法は、アッシェンバッハ・ダッシュというもうひとりのアッシェンバッハを登場させることだった。アッシェンバッハ・ダッシュを演じたのは、劇団員の曽世海司。アッシェンバッハ・ダッシュは影となってアッシェンバッハを監視し、時に鋭い言葉で揺さぶりをかける。アッシェンバッハ・ダッシュが規律と道徳の役割を引き受けることで、欲望と背徳の道へ突き進もうとするアッシェンバッハの心の動きをより鮮明に映し出した。ここが、今回の舞台化における大きな特徴のひとつだ。
馬場良馬の演じたタッジオは、どこかビョルン・アンドレセンを投影したような神聖な雰囲気を漂わせていた。決して台詞は多くない。その中でタッジオを成立させるために最も必要なのは、あの人の心を惑わす微笑みだ。特にオレンジを手渡す場面は、数少ないアッシェンバッハとタッジオの直接的なコミュニケーションのシーンとして強く印象に残った。
そして何より惹きつけられたのが、ヤシュー役を演じる劇団員の松本慎也だ。夏の海辺でタッジオと無邪気にはしゃぐヤシューの若さは、まるでアッシェンバッハの倒立像のよう。アッシェンバッハが失ったもの、アッシェンバッハがどんなに願ってももう手に入れられないものがそこにある。その健康的でよく引き締まった肉体が、アッシェンバッハの心を無残に引き裂き、同時に観客に陶酔をもたらす。
なんともせつなく胸をかきむしるのが、タッジオとヤシューの最後のやりとりだ。あのまばゆい戯れは、ひと夏の蜃気楼だったのだろうか。ヤシューの胸の内を想像すると、甘酸っぱいとも苦いとも言えない感情が痛みを伴いながら喉の奥の方で広がっていく。そして、そんなヤシューが鮮烈であればあるほど、タッジオの孤高の神秘性も際立つ。
映画と同じ、あの有名なラストシーン。暗転した瞬間の、息をひそめるような震え。そして客電がついたあとの夢から覚めたような不思議な心地は、この『ヴェニスに死す』だからなし得るものだろう。それをしっかり味わわせてくれたという意味で、今回の舞台化はそのビッグタイトルを掲げるにふさわしい作品だと感じた。
今回、アッシェンバッハに扮したのは、劇団員の笠原浩夫。タッジオを客演の馬場良馬が演じた。比較的しっかりした体格の笠原がアッシェンバッハを演じることで、地位と名声を得た大作家が制御できない恋心に翻弄されながらも威厳を保とうとする、その理性と本能の格闘が色濃くにじみ出る。ミュンヘンでは黒ずくめの服だったアッシェンバッハは、旅立ちと共に白のスーツに着替える。もう黒く塗り固めた世界には、戻れない。もう彼はタッジオに出会ってしまったのだから。
強く心をとらえられたのは、アッシェンバッハが化粧を施される場面だ。大の男の頬に塗られたピンク色のチークは見る人によっては笑い種かもしれない。けれど、きっと多くの観客にはそうは見えないはずだ。紅をさした瞬間のアッシェンバッハの高揚が、舞台上から観客の胸めがけて飛び込んでくる。規範意識という名の足枷から解放された喜びに、じんわりと体が熱くなる。タッジオをつけまわすアッシェンバッハは不気味かもしれない。でもその狂気より、初恋のような懊悩にシンパシーが湧いてくる。そんな人物造形だったと思う。
本作は、決して会話で心象風景が描写される作品ではない。舞台という表現方法の限られた場でアッシェンバッハの葛藤を伝えるために、演出の倉田淳がとった方法は、アッシェンバッハ・ダッシュというもうひとりのアッシェンバッハを登場させることだった。アッシェンバッハ・ダッシュを演じたのは、劇団員の曽世海司。アッシェンバッハ・ダッシュは影となってアッシェンバッハを監視し、時に鋭い言葉で揺さぶりをかける。アッシェンバッハ・ダッシュが規律と道徳の役割を引き受けることで、欲望と背徳の道へ突き進もうとするアッシェンバッハの心の動きをより鮮明に映し出した。ここが、今回の舞台化における大きな特徴のひとつだ。
馬場良馬の演じたタッジオは、どこかビョルン・アンドレセンを投影したような神聖な雰囲気を漂わせていた。決して台詞は多くない。その中でタッジオを成立させるために最も必要なのは、あの人の心を惑わす微笑みだ。特にオレンジを手渡す場面は、数少ないアッシェンバッハとタッジオの直接的なコミュニケーションのシーンとして強く印象に残った。
そして何より惹きつけられたのが、ヤシュー役を演じる劇団員の松本慎也だ。夏の海辺でタッジオと無邪気にはしゃぐヤシューの若さは、まるでアッシェンバッハの倒立像のよう。アッシェンバッハが失ったもの、アッシェンバッハがどんなに願ってももう手に入れられないものがそこにある。その健康的でよく引き締まった肉体が、アッシェンバッハの心を無残に引き裂き、同時に観客に陶酔をもたらす。
なんともせつなく胸をかきむしるのが、タッジオとヤシューの最後のやりとりだ。あのまばゆい戯れは、ひと夏の蜃気楼だったのだろうか。ヤシューの胸の内を想像すると、甘酸っぱいとも苦いとも言えない感情が痛みを伴いながら喉の奥の方で広がっていく。そして、そんなヤシューが鮮烈であればあるほど、タッジオの孤高の神秘性も際立つ。
映画と同じ、あの有名なラストシーン。暗転した瞬間の、息をひそめるような震え。そして客電がついたあとの夢から覚めたような不思議な心地は、この『ヴェニスに死す』だからなし得るものだろう。それをしっかり味わわせてくれたという意味で、今回の舞台化はそのビッグタイトルを掲げるにふさわしい作品だと感じた。
(左)曽世海司さん
なお、本作はAteam、BteamのWキャストで上演されており、本レポートはAteam によるものとなる。
(文:横川良明 写真: ATZSHI HIRATZKA)
スタジオライフ『ヴェニスに死す』は9月8日まで上演。詳細はInformationから公式サイトをチェックしてください。
■馬場良馬 出演動画はアプリで好評配信中↓■
☆Information
劇団スタジオライフ
『ヴェニスに死す』
日時:2021年9月1日(水)~8日(水)
会場:シアターサンモール
原作:トーマス・マン
脚本・演出:倉田淳
【キャスト】
笠原浩夫 馬場良馬 松本慎也 山本芳樹 曽世海司 遊佐航 ミヤタユーヤ 池辺光完 伊藤清之 大村浩司 藤原啓児
◆TICKET(全席指定席、日時指定、税込)
一般:7,700円
学生:3,000円(要学生証、ご本人様のみ有効)
高校生以下:2,500円(要学生証提示、ご本人様のみ有効)
<販売方法について>
お座席は全席指定席ですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、上演となる9月の状況に合わせた最適の配席とさせていただくため、チケット発券時は「整理番号」をお知らせし、整理番号順に前方よりお席を指定いたします。お席は当日、劇場で座席表をご確認ください。
◆チケット
販売窓口カンフェティ
http://www.confetti-web.com/venice_sl
0120-240-540(平日 10:00~18:00)※オペレーター対応
企画・製作 スタジオライフ
≪公式サイト≫
http://www.studio-life.com/stage/venice2021/
≪Twitter劇団公式≫
@_studiolife_
≪Twitter Studio Life THE STAGE≫
GE_studiolife
(文:横川良明 写真: ATZSHI HIRATZKA)
スタジオライフ『ヴェニスに死す』は9月8日まで上演。詳細はInformationから公式サイトをチェックしてください。
劇団スタジオライフ
『ヴェニスに死す』
日時:2021年9月1日(水)~8日(水)
会場:シアターサンモール
原作:トーマス・マン
脚本・演出:倉田淳
【キャスト】
笠原浩夫 馬場良馬 松本慎也 山本芳樹 曽世海司 遊佐航 ミヤタユーヤ 池辺光完 伊藤清之 大村浩司 藤原啓児
◆TICKET(全席指定席、日時指定、税込)
一般:7,700円
学生:3,000円(要学生証、ご本人様のみ有効)
高校生以下:2,500円(要学生証提示、ご本人様のみ有効)
<販売方法について>
お座席は全席指定席ですが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、上演となる9月の状況に合わせた最適の配席とさせていただくため、チケット発券時は「整理番号」をお知らせし、整理番号順に前方よりお席を指定いたします。お席は当日、劇場で座席表をご確認ください。
◆チケット
販売窓口カンフェティ
http://www.confetti-web.com/venice_sl
0120-240-540(平日 10:00~18:00)※オペレーター対応
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