【特集】念願の初共演を果たす、三浦涼介&新木宏典の知られざる関係とは?石丸さち子の演出で描かれる、ギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』7/8開幕直前インタビュー

パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念公演として、ギリシャ悲劇の最高傑作と称されるソポクレス作『オイディプス王』が、2023年7月8日からパルテノン多摩・大ホールにて上演されます。
スマートボーイズでは本作のキャストより、オイディプス王役の三浦涼介さんとクレオン役の新木宏典(荒木宏文改め)さんにインタビュー。本作への意気込みはもちろん、念願の初共演を果たすお二人の知られざる関係についても語っていただきました。
ギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』へ挑む意気込みとは?
【作品紹介】
生まれてはならぬ人から生まれ、娶ってはならぬ人を娶り、殺してはならぬ人を殺した男の運命を描く――紀元前より約2500年にわたり世界の観客を惹きつけてやまない、ギリシャ悲劇の最高峰と称されるソポクレス作「オイディプス王」。
日本でもこれまで幾度となく上演され、時代を象徴する俳優陣が挑んだ本作に、この度は“作品世界と人物を深く描く演出家”である石丸さち子の演出のもと、魅力的なキャストが集結しました。
『オイディプス王』公演キービジュアル
知らずして先王である父ライオスを殺し、母イオカステと交わり、四人の子の父となる主役・オイディプスを務めるのは、俳優、音楽活動と表現の場で常に輝きを放つ三浦涼介さん。
ほかキャストには、先王ライオスの妻であり、オイディプスの母、後にオイディプスの妻となるイオカステに元宝塚歌劇団宙組トップスターで退団後も舞台その他で活躍を続ける大空ゆうひさん。イオカステの弟クレオンに、話題作の舞台出演が続き注目される新木宏典さん。預言者テイレシアス役に、所属の文学座やその他の秀作舞台で常に高い評価を受ける浅野雅博さん。オイディプスの出生の秘密を知る羊飼い役に表現力と存在感に優れた外山誠二さん。コリントスの使者役は、演劇集団 円に所属し多くの舞台、ドラマ、映画に出演、実績を重ねる吉見一豊さん。そして神官と使者のニ役を担うのは、高い演技力で定評のある今井朋彦さん。
またこの出演陣に加え、元宝塚歌劇団男役スター悠未ひろさん、多彩な舞台で活躍する大久保祥太郎さん、元唐組の丸山厚人さんをはじめ、俳優とダンサー合計16名がコロス役で出演します。

■舞台『オイディプス王』開幕直前
オイディプス王 役:三浦涼介さん × クレオン 役:新木宏典さん インタビュー


――ギリシャ悲劇の最高傑作と称される『オイディプス王』は、タイトルこそよく知られている作品ですが、今回の舞台で初めて物語に触れる、という方も多いのではないかと思います。お二人は出演のお話をいただいた際に、今作についてどのように思われましたか?

三浦 僕はこれまでにも演出の石丸さち子さんと2作でご一緒しているので、作品内容や配役よりも、石丸さんの演出ということで「ぜひ!」とお答えしました。
ただ、その時はあまり難しく考えずに「ぜひ!」と言ってしまったものの、後から“ギリシャ悲劇の最高傑作”とか、“王役”という大変さに気付いて、先にちゃんと読んでおけば良かったな、と思いました(笑)。
オイディプス王 役の三浦涼介さん
新木 僕はまず、マネージャーに「なんで?」って聞きました(笑)。シェイクスピアを含め、僕はヨーロッパ方面の作品を全く経験してこなかったので、全然イメージが湧かなくて「僕で良いのかな?」って。でも、だからこそいい機会をいただけたなと思っています。

――新木さんは、『オイディプス王』の物語はご存知でしたか?

新木 詳しくは知らなかったので、お話をいただいてから調べました。それで戯曲を読んで、「これが紀元前から残っている、芝居のために作られている物語なのか!」と感動しました。話もシンプルで分かりやすいし、だからこそ感情移入もしやすい。すごく面白かったです。
クレオン 役の新木宏典(荒木宏文改め)さん
――では、それぞれが演じられる役柄はいかがでしょうか。オイディプス役の三浦さんは、本作のタイトルロールにして、“王”と名の付く役柄となります。

三浦 すごく色んな部分を持ち合わせた人間だな、と思いますね。自分の中でもやっぱり“王”というイメージが先行しがちで、最初は難しいなと思うばかりだったんですが……稽古が進んでいく中で、石丸さんは求めていることや、知っている知識の全てを僕に教えて下さるので、その一つ一つを大切にして。石丸さんは「三浦らしくていいから」とも言って下さったので、できる限り自分に寄せていく感覚で、今は試行錯誤をしています。

――そして新木さんは、オイディプス王の母・イオカステ(大空ゆうひさん演じる)の弟であるクレオンを演じます。

新木 オイディプス王の叔父にあたるんですが、劇中ではオイディプス王の部下で、“側近”というような立ち位置の役ですね。

――世界観や時代背景を含めて、ご自身との共通点が少ない役柄を演じる上で、どのように役作りをされていますか?

新木 僕は石丸さんとご一緒するのも初めてなので、多分まだ、石丸さんが求めている絵を伝えるために使われたワードが、僕の中では違う絵になっていることが多いんだろうな、と感じていて。それは僕の、こうしたジャンルの作品を経験してこなかったからこその引き出しの少なさで、まだ見ている景色が違うんだろうなって思うんです。
でも分からないからこそ、分かるための質問をしてスムーズに進めるのではなく、まずは自分自身で分かるきっかけを作るために、自分から学んでいくことに今は時間を使いたいな、と思っています。

――まずは作品の背景や、古典劇についての理解を深めようと。

新木 そうですね。自分で調べたことと、稽古で言われたことをすり合わせていく作業を通して、僕は理解していきたい。『オイディプス王』を理解するための勉強に時間を使いたいなと思ったので、とても苦労してはいますけど、充実した時間にもなっています。

――三浦さんも、役作りのヒントやきっかけにしているものはありますか?

三浦 僕は、石丸さんの言葉だけが頼りです! とにかくそれだけを信じてやっている感じで……もう、本当に大変なんです(笑)。

――現在は稽古が始まって二週間ほど(※取材時)とのことですが、稽古の状況はいかがでしょうか。

三浦 一日が過ぎるのが早くて、ちょっとびっくりしています。ずっとセリフがぐるぐるしていて、寝ていても寝てない感覚だし、本当に喋りながら起きるんですよ!(笑) 気付いたら自分が喋っている気がして、“ばっ!”と飛び起きるんです。

新木 そんなに呪われているんだ(笑)。

――三浦さんが演じるオイディプス王は、ほぼ出ずっぱりに近いですよね。

三浦 そうなんです。しかも入れ代わり立ち代わり、とんでもないオーラを持った役者さんが僕の前に出てくるので、まずはその恐怖と戦いながら。これ以上は何も言えないくらい、追い詰められています(笑)。

――そんな座組の中でも、お二人は今作が初共演となりますが、以前からプライベートではお知り合いだったそうですね。

三浦 はい。元々共通の知り合いも多くて、僕があることをきっかけに新木さんと連絡を取らせてもらって。すごく昔のことですが、一度だけお食事もさせてもらったことがあります。

新木 三浦くんは昔、僕のことを尊敬している、とすごく熱弁してくれて。その食事の時には、「D-BOYSに入りたかった」って話をしてくれましたね(笑)。

三浦 よく覚えてますね!(笑)

新木 それで連絡先を交換して、連絡を取り合うようになったんですけど……その後すぐに、僕が人と連絡を取ることを避けてしまっていた時期があって。それで僕からは連絡を絶ってしまったんですけど、それでもずっと気にかけてくれて、定期的に優しい文章を送ってくれて。最後まで、僕に連絡をくれていた人なんです。

三浦 僕が最後だったんですね(笑)。でも当時は、どうしても気になってしまって。

――三浦さんとしては、新木さんともっとお近づきになりたくて?

三浦 そうですね。僕は小さい頃からこのお仕事をしていて、どうしても「こうしなきゃいけない」「こうじゃなきゃいけない」と言われることが多々あって……それに「僕はこうしたくないのに、なんでこうしなきゃいけないんだろう」というジレンマを感じていた時期に、同世代の役者の中でも、新木さんはすごく個性豊かに、自分を持って生きているように見えたんです。それできっと、「あぁ、僕は絶対この人についていけばいい、そうすれば大丈夫な気がする」と感じて、もっとお話ししたかったんじゃないかな。

新木 昔の僕も怒られましたし、周りと衝突もしましたけどね(笑)。でも、同じ悩みを抱えていて、そう思ってくれていた人がいたことは支えになりますし、嬉しいです。今では、「自分を曲げずにやってきてよかった」と思えますから。

――そうした距離にいたお二人が、今作ではいよいよ初共演を果たすことに。この共演を聞いた時は、どう思われましたか?

三浦 僕はもう、本当に嬉しかったです。

新木 僕は震えました。「えっ!? 俺、できんのかな」って(笑)。三浦くんの作品はこれまでにも見ていたけど、もう見るからに“畑が違う”って言うのかな。僕がやってきたことは和風寄りで、三浦くんは西洋のスタイルがすごくしっくりくる。見ていてもパッと華があって、「俺はこっち側にはいけないよな」という世界の人だったから、僕らが共演する機会ってどこにあるんだろうと思っていたんですけど……こうして『オイディプス王』で共演することになって、僕が違う畑に来ちゃった感じで(笑)。

――どちらかというと、「三浦さん側の畑に来ちゃったぞ」と(笑)。

新木 ここで肩を並べるのは恐怖だし、プレッシャーも感じています。でも、こういう機会をもらえたことはありがたいし、「すごいな!」と思っていた役者さんが“王”としてすぐ近くにいる、こんなに贅沢で刺激的な空間はないなってゾクゾクしますね。

――では稽古が始まってから、お二人はどのようなやり取りをされていますか?

新木 僕たちのキャッチボールは、お芝居以外では一切ないです(笑)。

三浦 アハハ! 稽古場自体、やっぱり作品の内容として和気あいあい、という感じにはどうしてもならなかったりするんですけど、石丸さんやスタッフの皆さんは、「こういう作品だからこそ、休憩時間は明るく楽しくやろう」と言って下さっていて。ただ、今のところちょっとまだ、僕はその余裕がないですね(笑)。

新木 僕も自分の勉強と石丸さんとのすり合わせに必死だし、三浦くんはセリフ量が鬼のようだから(笑)。「僕が休憩時間に話しかけて、セリフが整理できなかったら悪いな」って思うと、もう遠くから見守っているだけの状態ですね。
それに僕が連絡を取らなくなったのも、こっちの一方的な都合な訳で……その事情を、彼は何にも知らなかったわけですよ(笑)。

三浦 そうですよ! 僕は元々、勝手に思い込みがちな人間なんですよ。だからずっと「僕、なんかしちゃったのかな」って思っていました(笑)。そのせいで正直、今日まではちょっと違和感がありましたよね(笑)。

――かつては返事がなくても、新木さんに連絡し続けていた三浦さんなのに(笑)。

三浦 いや、今日は取材で聞いていただけたから僕たちも話せていますけど、過去に触れられたくない方もいると思うので、僕としては昔のことも「これ、新木さんに言っていいのかな? どっちなんだろう?」と思っていたんですよ(笑)。言うだけ言ってみようと思って、こうして話せて良かったんですけど。

新木 取材を通じて、やっとあの頃の事情を話すことができました(笑)。

――稽古期間のうちに、あの頃を振り返る機会があって良かったかもしれませんね。

新木 三浦くんからしたら、急に連絡を返さなくなった僕と会うの、怖かったよね!?(笑)

三浦 でも、僕の方もすごかったですよね。しつこく連絡し続けて(笑)。

新木 本当に、あの時の三浦くんの言葉は優しかった。それは救いだったんです。改めて、本当に申し訳なかったです。

――そして今は、お互いが作品に集中している状態で。この公演を終えた時こそ、お二人が改めて親密になれる良いタイミングになるかもしれませんね。

新木 稽古場では見守ることしかできないですけど、公演後には近づける場を設けたいですね! 今作での僕は、側近にして“親友”という言葉も出てくるぐらい近しいポジションにいるからこそ、稽古場で追い詰められている三浦くんを見るたびに、なにか精のつくものを食べないと、彼は持たないんじゃないか、って心配をしてしまうんです(笑)。

三浦 それ、プロデューサーさんにも言われました(笑)。「こんなコロナ渦のご時世じゃなかったら、三浦くんと焼肉でも食べに行きたいんだけど」って言われて、その気持ちがすごく嬉しかったです。ぜひ、公演後にはご一緒しましょう。

――ここからは、作品にちなんだ質問も。今作は、“運命”と呼ばれるものに王族たちが翻弄されていく物語ですが、お二人は“運命”をどのように考えていらっしゃいますか?

三浦 僕は、人生って良くも悪くも自分で変えられるような気がしているので、「それが運命だった」と思われるよりは、「自分でこっちに持っていったんだ」と思いたいし、周りにも思ってもらいたいですね。だから「運命に任せる」という感覚はあんまりないし、良い方向に転んだら「自分で決めたんです」って言うし、悪い方に転んだら「いや、運が悪かったのかな?」って言うと思います(笑)。

――つまり三浦さんは、「運命を信じます!」というタイプではない、と。

三浦 なんだか、恥ずかしいんです。例えば、すごく素敵な人と出会ったとしても……「これが運命なんだ!」とは、ちょっと言えないかな(笑)。

新木 僕は自分ではなく、周りへの安心材料に使うことが多いですね。先日、40歳の誕生日に名前の表記を変えたんですが(「荒木宏文」から「新木宏典」へ改名)、その時に占い師のぷりあでぃす玲奈さんからも、「改名するにはいい時期」とアドバイスをいただいて。自分のバースデーイベントでも、その占っていただいた内容をVTRで流したんですけれど、それを聞いてファンの方も安心してくれたと思うんです。でも僕は、占いでダメって言われていても名前は変えていただろうから(笑)。

――新木さんの改名も「運命に従った」というよりは、あくまでも自分の意志だと。

新木 そういう意味で、僕も運命論者ではないですね。でも、周りを説得するための材料にはなると思うし、先のことって誰にも分からないから、占いやお告げのようなものを聞いて、「これが運命だ!」と思うことで安心する人がいるのであれば、それに従うのも全然アリだと思います。
――それでは最後に、公演を楽しみにされている皆さんへのメッセージをお願いします。

新木 皆さんの集中力が切れないうちに突き進んでいく、すごく衝撃的な作品です。僕自身も勝手に難しいと思っていた『オイディプス王』ですが、触れてみるとすごく面白かったし、僕みたいに活字が苦手な人は、本を読むよりは演劇を観た方が早いですから!(笑) ギリシャ悲劇というジャンルに興味を持ってもらうきっかけにもなれる作品だと思いますので、ぜひ劇場にいらしていただきたいです。

三浦 すごく難しく思われる作品ですが、僕がやらせていただくオイディプス王の姿は、どこかで皆さんの希望にも繋がるような役にできればいいなと、精一杯に稽古を頑張っています。楽しんで観ていただければと思いますので、劇場でお待ちしております!
(インタビュー 完)

パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念 『オイディプス王』は、東京公演がパルテノン多摩 大ホールにて2023年7月8日(土)、9日(日)、12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)、17日(月祝)に上演。続いて兵庫公演が、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて2023年8月19日(土)に上演されます。
ほか公演詳細や最新情報は、下記のInformationより公式サイト、公式Twitterをご確認ください。

クレジット
ヘアメイク:春山聡子
[三浦]スタイリング:村瀬昌広

☆Information
■パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念
『オイディプス王』

【作】ソポクレス
【翻訳】河合祥一郎
【演出】石丸さち子

【出演】
三浦涼介 大空ゆうひ 新木宏典(荒木宏文改め)
浅野雅博 外山誠二 吉見一豊 今井朋彦
悠未ひろ 大久保祥太郎 相馬一貴 岡野一平 津賀保乃 林田航平 小田龍哉 丸山厚人 福間むつみ
皆川まゆむ 笠井瑞丈 鷹野梨恵子 嶋崎綾乃 モテギミユ 栗朱音 藤村港平

【東京公演】
日程:2023年7月8日(土)、 9日(日)、 12日(水)、13日(木)、15日(土)、16日(日)、17日(月祝)
会場:パルテノン多摩 大ホール

アフタートーク スケジュール:
9日(日):石丸さち子 三浦涼介 大空ゆうひ 新木宏典(荒木宏文改め)
12日(水):三浦涼介 新木宏典(荒木宏文改め) 河合祥一郎 石丸さち子
13日(木):石丸さち子 大空ゆうひ 悠未ひろ 大久保祥太郎
15日(土):三浦涼介 大空ゆうひ 今井朋彦 浅野雅博
16日(日):新木宏典(荒木宏文改め) 石丸さち子 今井朋彦 浅野雅博

チケット料金:9,500円(全席指定・税込)
チケット取扱:
パルテノン多摩 042-376-8181(10:00~19:00 休館日を除く)
https://www.parthenon.or.jp/
チケットぴあ https://t.pia.jp/(Pコード:518-658)
イープラス https://eplus.jp/
企画製作・主催:パルテノン多摩共同事業体

お問合せ:042-375-1414(9:00~22:00 休館日を除く)
【兵庫公演】
日程:2023年8月19日(土)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

≪公式サイト≫
https://www.oedipus.jp/
≪公式Twitter≫
@oedipus_jp